2021/07/03

#東京五輪の開催中止を求めます #CancelTokyoOlympics

 

 

  

COVID-19感染拡大がおさまらない中、2020年から1年延期された東京オリンピック が、2021723日に開会されようとしています。それに対して、私は、東日本大震災津波被災地ほかの支援にたずさわる中で2020年の東京五輪招致・開催に関係する問題を知り、反対意見を表明してきました。
 

抗議の一環として、以下の内容を2021/06/30付でFacebookに投稿してもいます。
https://www.facebook.com/hirose.shunsuke/posts/4161011043995972

その投稿を、東日本大震災以降この国で起きてきたことを記録するとともに、言論による抗議を続ける意味で、このブログ「東北風景ノート」にも載せておくことにします。題は、
私が参加するTwitterデモで使われるハッシュタグから #京五催中止を求めます #CancelTokyoOlympics を選んで付けました。

以下に、その記事を写します。


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#京五催中止を求めます

#CancelTokyoOlympics

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開始される前はもちろん、開始されてしまってからもで言い続けましょう。このままでは、一層のCOVID-19感染増が危ぶまれます。五輪開催後の日本がどうなってしまうのか、恐ろしくてなりません。


今回の東京五輪は、東日本大震災復興による建設費高騰に拍車をかけて復興を遅らせました。それは、十分に予測されていました。だから、何より東京に五輪を招致すべきでないと考え、主にTwitterで東京での開催決定以前から反対意見を表明してきていました。

東京五輪、6割「復興にマイナス」 被災42市町村長|2014/03/03 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASG2T4PYDG2TUNHB010.html
東日本大震災6年・復興の検証: 資材・人件費高騰|2017/2/21 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20170221/ddm/001/040/128000c


安倍前首相の招致演説における虚偽に始まり、最近のCOVID-19感染拡大への対応の不備まで、これまでに東京五輪の招致、準備に関してさまざまな問題が起こされてきました。ここでは、その中の一つ、新国立競技場建設に伴う周辺再開発による問題 (都営霞ヶ丘アパートの住民への移転強制を含む) についての情報を、私が東京五輪の開催中止を求める理由を示す意味からも、共有します。

 



旧都営霞ヶ丘アパートの位置は、空中写真上に白い線で囲んで示しました。


「これらのアパートメントの元住民たち (多くは高齢者) は,こうした公共住宅から出ていくことを強制されているし(稲葉,2015),加えて,多くのホームレスたちが,彼らの暮らす都市公園から排除され,新たな商業建築物とホテルが,その同じ場所に建造され始めているのである」

J-STAGE: 大城直樹 (2020) 東京オリンピック19642020 ― 都市 (再) 開発の様相に関するメモランダム ― . 経済地理学年報 66 (1). pp. 49-59.

https://doi.org/10.20592/jaeg.66.1_49


「オリンピックが奪う『終の住処』」

映画「東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート」公式ウェブサイト (2021/08/13より、アップリンク吉祥寺ほかにてロードショー)

http://tokyo2017film.com/


新国立競技場の余波…「都営アパート」立ち退きを迫られた住民、国に要望書を提出|2015/08/31 弁護士ドットコムニュース

https://www.bengo4.com/c_1012/c_1236/n_3616/


公費も労力も、今は五輪より防疫や、疫病の被害を健康面や経済状況に受けた人々の支援に優先して投じて欲しいと思います。


それから、友人に医師や看護師がいますし、最近友人のお子さんが希望叶って看護師になりました。そのように医療の仕事につく知人友人や、人口の多い都市部、特に五輪開催地の東京に暮らす知人友人のことが、第一に心配です。


あきらめずに声を上げ続けましょう。仮に望んだ結果が得られずとも、少なくとも大人がすべきことを子供たちにして見せましょう。そして、東京都議選と衆院選で、投票に行くだけではなくて、有権者が鍛えれば理不尽でない政治が行えるように育っていきそうな候補者を当選させましょう。



追記
私は、東京五輪の招致と開催に反対してきましたが、2014年東京都知事選に際して宇都宮健児候補の街頭演説会が22日に渋谷駅ハチ公前広場で開かれた際、20139月に東京での開催が決定していた五輪に備えた東京のデザインはどう考えるべきかとスタッフの方から問われ、仮にそれを積極的に生かす立場にあるならばこう考えますとその会でスピーチを行っていました。

それを翌23日に連続ツイートしていましたので、参考までに紹介します。

2/2の宇都宮候補街頭演説会での私のスピーチ概要を連続投稿。五輪に備えたこれからの東京のデザインは? と問われ、関東大震災復興に際し改善が図られた都市基盤の脆弱性が、前回東京五輪開催に合わせた突貫工事で再び問題化され、石原都政以降防災予算が減らされ、まず災害防備を基本にと (続)
https://twitter.com/Shun_Hirose/status/430334911413624832


(承前) そのヒントはこれも関東大震災復興にある。不燃建築の小学校と延焼防止機能を持つ緑地を合わせた、当時の「復興小学校/復興小公園」にはこんな効果もあったろう。防災の他に空気清浄化機能を持ち、かつ炭素固定と小学校や周辺の家屋の熱環境調節を果たして低炭素社会保持に貢献も。(続)
https://twitter.com/Shun_Hirose/status/430335198102704128

(承前) 防災、ヒートアイランド、保健衛生、教育、福祉等々にかかわる問題群の解決は、対症療法的にではなく総合的に図るべきなのではないか。宇都宮候補の「総合政策集」は、そうした志向のもとに作成されたものと受けとめられ、その実効性が評価できた。 (続)
https://twitter.com/Shun_Hirose/status/430335449723195393

(承前) 宇都宮候補の「総合政策集」は、人間性と持続可能性を根底に置いて、既成の社会・産業構造のうち変えるべき部分を指摘し、その変革へ様々なかたちで市民が参画することを実現可能性の前提として作成されたものと解釈する。彼は「民主社会を共に拓こう」と私たちに呼びかけている。 (終り)
https://twitter.com/Shun_Hirose/status/430337293379829760

しかし、同候補の当選は成らず、五輪の準備は、上記した通り東京のジェントリフィケイションに拍車をかけ、また、街路樹や公園樹をむしろ伐採、剪定しながら行われました。

なお、COVID-19の経験を経た東京やその他の大都市の今後にとって、以下の記事に書かれる
「都市における緑化が微生物の多様性を回復させ、人間の健康に寄与する可能性がある」ことを、上の一連のツイートの内容に重ねて考えることが肝要となるとも、私は考えています。

ポストコロナの暮らしは「微生物と共生を」 顕微鏡の世界の可能性|2020/05/31 Forbes JAPAN
https://forbesjapan.com/articles/detail/34784/1/1/1


https://twitter.com/Shun_Hirose/status/430334911413624832?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E430334911413624832%7Ctwgr%5E%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Fpublish.twitter.com%2F%3Fquery%3Dhttps3A2F2Ftwitter.com2FShun_Hirose2Fstatus2F430334911413624832widget%3DTweet
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2021/05/24

「食と地域生態系の関係」を考える: 石倉敏明氏講演「万物の生命の根源、土について」の私的記録 Think about 'the Relationship between Food and Local Ecosystems': Personal record of Dr. Toshiaki Ishikura's lecture 'The source of all life, the soil'

 

 

 

 

 イタリア人写真家アレッシア・ローロ (Alessia Rollo) 氏の写真展「The Matter」が、益子町で、「土祭2021」関連企画として開かれています。その初日に、ローロ氏と、人類学、神話学を研究される石倉敏明・秋田公立美術大学大学院准教授を迎えてのトークセッション「万物の生命の根源、土をめぐる対話」が、イタリア、秋田、益子を結び、オンラインで催されました。ここでは、セッションの前半に行われた石倉氏の講演について書きたいと思います。

 

 ローロ氏は、20192月に益子に滞在して制作をしました。そして、益子の人と手仕事とその素材とされる粘土などの関係に、神が万物を土からつくったと世界中で伝承されることを重ねて、主題が設定されました。被写体は、益子と周辺の人と、人が生み出す物と、土地でした。

 

 石倉氏の講演「万物の生命の根源、土について」は、生命が土から生まれ、朽ちて土に還るという自然の摂理をいう神話や伝説が、他ならぬ私たちの生きる営みと直接つながっていることを、すっと実感させてくれるものでした。それによって、事実の記録にもとづく表現ではなく、ある場面を構成して撮影し表現されるローロ氏の写真作品は、私にとってとらえやすくなりました。

 

 講演は、「超越者が土から人間をつくる、という神話は世界中で伝承」という説明からはじまり、次いで、日本でいえば天照大神が洞窟に身を隠した天岩戸隠れにあたる「太陽が土の中に隠れる」神話を例に、土と日、火の関係にふれられたあとで、「火による生とモノの変容」が「伝統的な土間と台所」で起こされてきたと語られました。

 

 「肉を生で食べるとかたいが、火と器をつかってやわらかくにこむことができる。」そして、このことは、「腸の機能の拡張」といえると、石倉氏は話しました。私は、このようなことを考えるとき、肉と火の関係にのみ着目し、器について考えたことはありませんでした。「腸の機能の拡張」が、火と共に人が土などからつくる器が用いられて可能となることを理解し、新鮮に感じました。

 

 

講演で「家を守護する聖なる仮面: 『火と土の神』」として宮城県登米市、刈田郡蔵王町における例が紹介された「カマガミサマ」。粘土や木で作られた台所の神が家を守る。写真は、筆者が同県柴田郡柴田町で2018年9月に撮影。

 

 これに続けて、石倉氏は芸術の起源と、人と物質、大地との関連にふれ、それに対する柳宗悦芹沢銈介濱田庄司バーナード・リーチ (Bernard Leach) らの関心について紹介され、そのことが「民藝運動の初発の意識にも関係していなかったか」、「民藝運動における『土の思想』と見ることができないだろうか」と述べられました。私は、民藝運動のもとにある民衆的工芸に見当たる、物質の循環利用を生態学的に評価はしていました。しかし、氏の考えは、民藝運動の動機を人の歴史の古層に結びつけるもので、とても奥深く感じられました。

 ここから、石倉氏は、奥津軽は相内の虫送り (青森県五所川原市) や秋田の人形道祖神 (秋田県能代市、湯沢市) の調査からわかったこと、考えたことを紹介されました。「大地に生きる精霊としての『虫』は、土から湧いてくるものであり、解体者であった。」「稲虫は、稲を解体する。食物を解体する虫もいる。」そして、津軽では、虫は飢饉による餓死者 (ケガチ。益子では、星の宮ケカチ遺跡の「ケカチ」が飢饉を意味する言葉として知られています) の転生した姿と伝えられてきたとの説明がありました。

 

 生態学では、 生物の遺骸や排出物をえさとして、有機物を分解して無機物にする生物、微生物を分解者と呼びます。このことの理解は、社会の持続に物質循環が必要であることから、広がっているようです。しかし、一般に害虫とされる作物を食べる虫などを解体者と見ることは、自然のものごとの理 (ことわり) を素直に受け入れるために一層向く、物の見方であると感じました。

 

 石倉氏は、講演のおわりに「内臓と外臓: 食と地域生態系の関係」というキーワードを示されました。「外臓」は、氏の造語とのことで、「腸の機能の拡張」を含んだ人と土や万物の生命などとの関係を指しています。とても大事なところですので、氏の発表スライドからその説明を引きます。「食と地域生態系の関係」とは、「ある地域の食材調達法、料理法、食事法」が「他のローカルな秩序と隣接し、互いに影響を与え合っている」ことであり、「地域の食文化は、人間が地域生態系とつながって成している、生々しい回路ともいえる。」

 

 途中、石倉氏は自身がたずさわられる、不耕起で農薬と肥料を使わずに行う稲作についても紹介されました。私は、「食」「地域の食文化」を問題とする際に、地域における食料生産をまず思い浮かべます。それに対して、「地域の食材調達法」という見方は、食材が生産される箇所と調理場、食卓を、ある実感を持って結びつけて考えられていればこその言葉の選び方、概念の用い方によるのではないかと感じました。

 そして、この文脈のなかに「火による生とモノの変容」があり、そこには「肉を生で食べるとかたいが、火と器をつかってやわらかくにこむことができる。」ことなどが含まれ、「腸の機能の拡張」が、火と共に人が土などからつくる器が用いられて可能となると石倉氏がいわれたことを、私の備忘のために、ここにもう一度写しておきます。

 私にとって、石倉氏がいわれることの一つひとつが実際的で、講演を聴き、ふだん何気なく感じている日常の奥底、根源にある、ものごとの理、流れを、今までになく実感、直視できたように思います。突き詰めれば、生に必要なことを、私たちは生きるために日々行おうとしています。その本質、核心にあることを、根源的なことというのだろうと、まだ十分に整理はできていませんが、私は感じました。

 

 奥深い生の実感、認識をもって、ここ益子で日常を送ることができていけそうな素晴らしい講演を、石倉敏明氏より益子の私たちへお贈りいただけた気持ちです。興趣に満ちたかけがえのない時間を、週末の午後に過ごせました。ローロ氏、石倉氏をはじめ、関係者の皆様に最大級の感謝を表します。ありがとうございました。

 

 

 

  

写真展 Alessia Rollo “The matter”フライヤー (表面)

 

土祭2021関連企画|写真展 Alessia Rollo “The matter”

日程: 522() から66()
10:00-18:00
(初日のみ15:00まで)

: ヒジノワ cafe&space

主催: Alessia Rollo/European Eyes on Japan vol.21 /益子展 行委
: Matera Basilicata 2019
助成: EUジャパンフェスト日本委

 

トークセッション「万物の生命の根源、土を巡る対話」

日程: 522() 16:30-18:30

構成: 1 石倉敏明氏講演

   2 アレッシア・ローロ氏、石倉敏明氏対談


進行
: 菊田樹子 (European Eyes on Japan アーティスティック・ディレクター)

通訳: デイ麗奈

企画運営: 簑田理香 (地域編集室簑田理香事務所)

 

 

参照

Alessia Rollo ウェブサイト 

http://www.alessiarollo.it/
土祭2021
写真展 Alessia Rollo “The matter”
https://hijisai.jp/program/k-02-1/
秋田公立美術大学|教員紹介|石倉敏明
https://www.akibi.ac.jp/teacher/7039.html
土祭2021
トークセッション「万物の生命の根源、土を巡る対話」
https://hijisai.jp/program/k-02-2/
天岩戸神社ウェブサイト
https://amanoiwato-jinja.jp/
京都大学大学院文学研究科・文学部|思想家紹介 柳宗悦
https://www.bun.kyoto-u.ac.jp/japanese_philosophy/jp-yanagi_guidance/

静岡市立芹沢銈介美術館|芹沢銈介について
https://www.seribi.jp/serizawa.html
公益財団法人 濱田庄司記念益子参考館|濱田庄司
https://mashiko-sankokan.net/top/about/
独立行政法人 国立文化財機構 東京文化財研究所|バーナード・リーチ

https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/9783.html

日本民藝協会|民藝とは何か

https://www.nihon-mingeikyoukai.jp/about/

文化財オンライン|相内の虫送り
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/241103/1
ÉKRITS〈エクリ〉|外臓と共異体の人類学 More-Than-Human Vol. 7 石倉敏明 インタビュー (聞き手: 唐澤太輔)
https://ekrits.jp/2020/12/3980/
ファームガーデンたそがれ
http://tasogare.akita.jp/

 

 

追記 (2021/06/10)

同展初日トークセッションの記録が公開されました。

土祭2021関連企画|石倉敏明氏 講演「万物の生命の根源、土」2021/05/22
(土祭2021会期最終日の20211114日まで公開)
 
アーカイブ公開|522日トークセッション 「万物の生命の源、土をめぐる対話

 

 

 

 

 

2021/01/01

10年目の早戸温泉遊歩道環境整備実習, 2019/8/26 - 9/1 Tenth year of environmental management training of the Hayato Hot Spring Trail, 26 August - 1 September, 2019

 



 福島県大沼郡三島町早戸地区で、東北芸術工科大学の教員・学生有志を中心として行う早戸温泉遊歩道環境整備実習は、2010年夏に私が代表として開始した時から数えて、2019年夏に10周年を迎えていました。私は、同大学の学部教員であった2012年度まで実習の代表を務めました。現在の代表は、渡部桂准教授です。そして、田賀陽介元准教授の豊富な知識と技術が、この実習の大きな推進力となっています。


 
11周年を迎えた2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、現地での実習は中止されました。参加メンバーは今年、 リモートミーティングで早戸地区の方々から環境整備に関した報告、相談を受けながら情報収集をし、技術提案を行うなどの活動を行いました。なお、2019年実習について報告ができていませんでしたので、今年2020年の活動の一環として、簡単ではありますが記事を投稿します。


【第1 −8/26

 
2019年実習の第1日目は、皆で遊歩道の状況を確認し、集落の環境・景観を視察した後、早戸地区の方々が開いてくださった歓迎会に参加しました。学生一人ひとりの挨拶を、最長老の弥一さんが目を細めて頷きながら聞かれていた様子に感じ入るものがありました。

 

 

遊歩道が河畔の草原から樹林の中へ入る箇所です。2010年夏の実習第1回で整備した石積み擁壁がほぼ植物に覆われています。
昨年の作業内容とその後の環境変化、そして今回の作業内容に関した説明が行われます。
2011年の東日本大震災、東京電力福島第一原発事故に続いて起きた、平成23年7月新潟・福島豪雨災害による洪水で上流から流された砂が大量に堆積した箇所です。この時、写真に写るクルミ類の幹には瓦礫が絡まり、海岸部で見た津波被災地の状態が重なって見えました。瓦礫を撤去し、砂地に優先した外来種草本植物を抜き取った後、利用者に遊歩道への意識が一層向くように木杭を打ちました。

 

【第2− 8/27 

 午前中は、今回の施工箇所を中心に選択的除草をして、植生管理と遊歩道管理に関した作業を行い、かつ現地での変更ありきの順応的な設計・施工の準備段階となる地形の体感的把握をしました。

 写真は、私が単独で、皆の作業成果が浮かび上がって見えるようにと作業を行った箇所を写したものです。外来種植物のヒメジョオンと繁殖力がきわめて旺盛なイタドリ、高木に絡みつき巻き枯らしてしまうフジを対象に抜き取り、刈り取りを行っています (写真上が作業前、下が作業後) 。スギ植林で実生から育ったミズナラやクリ、イタヤカエデ、ホオノキなどが生長し、将来はここが保持林業の実験林、見本林のようになったらなどとも考えながら作業をしました。

 

 

作業前


作業後


 午後からは、遊歩道と森林管理用作業道が合流する箇所に当たり、小型重機が向きを変えられるようにすることも目的として設けた小広場の、山側の切土部への空石積み擁壁施工を始めました。第2日と第3日は、福島県土木部の会津若松建設事務所、宮下土木事務所からの職員の方々の研修を受け入れて、この作業を行いました。



【第3 − 8/28


 夕
方、上記の空石積み擁壁施工が、ほぼ終わりました。


 午前中は、第
1回施工箇所のスギ枝編柵補修などを今回実習の後半で行う準備として、繁茂したクズを刈り払い、また落葉広葉樹の下枝を伐って林内や只見川へ視線が通るようにする作業を行いました。

 


今回施工した空石積み擁壁。この遊歩道の石積み工は、すべてモルタルを使う練石積みではなく、石をかみ合せて固定する空石積みによります。

空石積み擁壁の施工風景。
夜、自分たちの作業の意義や課題について振り返ります。



【第4− 8/29

 

 29日は休日としていましたが、講師は学生の希望者と午前中に植生調査を実施しました。調査区は、今後スギ間伐が考えられている範囲から選ばれました。調査目的は、第一に間伐前後での植生の変化を記録することでした。


 夕方
5時からは、地区の方々よりここでの暮らしや思い出や困りごとなどを実習参加者皆でお聞きする懇談会が開かれました。地区の方々に熱心にお話しいただけ、私たちの側はこれからの地方地域のあり方と自らのかかわりの持ち方についていろいろな角度から考えることができました。個人的には、この方々にこうしてよく面倒を見てもらえている影響が学生たちのこれからに必ずあらわれてくるだろうという印象を受けました。


 夕食後は、現地から持ち帰った未同定の植物の部分をもとに講師が同定を行い、植生図と植生調査票を完成しました
(私には、現地での3種に関した誤りを見つけることと1種の同定ができました)

 

 

植生調査の様子。

地区の方々に、ここでの暮らしや思い出や困りごとなどについて実習参加者が伺う懇談会の様子。実習参加者が宿泊所として貸し出していただいた地区公民館の一室で開きました。

現地で同定できなかった植物の部分を持ち帰って図鑑と照合し、植生図と植生調査票を作成しました。

 

【第5 − 8/30 

 

 休日が明けて、2日目午前中に刈った草木を各所で整えて集積し、林内の光環境調整を第一に川面へ遊歩道利用者の視線が通るようにすることも意図して必要に応じ低木をさらに間引くこともしました。


 その上で、
10年前の施工箇所 (この日の写真1点目) 周辺の修景 (曖昧な言葉ですが時間の都合上仮にここで用います) と、同じく10年前に施工し翌年の豪雨災害を受けて改修した箇所 (2点目) の機能回復 (石畳のある暗渠の上に土が堆積していました) などの作業を行いました。


 一日を通して雨が降ったり止んだりの天候で、特に夕方からは豪雨に見舞われてなかなか大変でしたが、学生、講師とも元気に作業を続けました
(招聘講師でしかない私としては、ただただこの実習を企画・運営し実行する他の人々に尊敬の念を抱くのみです) 。写真3点目は、午後見られた只見川の川霧です。

   

 

 

遊歩道から川を見た時に視線が通るように、そして生物多様性保全に留意もして、スギ植林の下刈りを行いました。

もともと斜面から流れ下る水がたまる箇所で2010年にその改良を試みたところ、2011年の豪雨災害後に川からの砂が厚く堆積しました。そこへ暗渠を設け、上面を石畳としていましたがその上へ土が被り再びぬかるみやすくなりました。そのため、土を取り除いて石畳を露出させる作業を行いました。

スギの木立ごしに見る只見川の川霧。

 

【第6 − 8/31

 午前中は、遊歩道での空石積み擁壁新設による森のなかの作業車両転回空間兼小広場整備、植生管理のために刈った草木の整理、既整備箇所の補修、森の入口への小広場整備などを完了しました。


 午後は、逗留する早戸居平
(通称「早戸本村」) の樹林の一部で林床の草木を刈る作業を行いました。これは、昨年から地区の方々との懇談会で「昔は奥の沢まで見通せた」とお聞きしてきたことを、思い出の風景としても今のように獣害に遭わなかった頃の環境の様態としても大切に、植生管理の試行をしてみたものです。


 実習後半からの参加学生と大学を卒業した学生時代の経験者や卒業後初めて参加するメンバーも加わり、新たな勢いを得て作業最終日を無事に終えることができました。

 

 

遊歩道が樹林に入る箇所の脇に比較的勾配の小さな地面があり、そのままでは先駆種植物などが優占する状況が何年も続いていたことからこれらを一度刈り取り、作業車両の停車や資材の仮置き、遊歩道管理者・利用者の休憩などに使えるよう広場的に整備をしました。

上の施工箇所と遊歩道の樹林入口での昼食休憩時の様子。

早戸本村でも、樹林の下刈りやツル伐りなどを行いました。

 

【第7 − 9/1

 午前9時からの早戸地区の方々への報告会と、これと前後しての宿泊先の地区集会所等の清掃、作業用具の洗浄と返却をもって本実習は無事終了しました。


 

早戸地区の方々への報告会。各施工箇所の担当学生が、それぞれの分担について説明します。

報告会より。小広場の山側に施工した石積み擁壁について説明。

報告会より。早戸本村の林内にて。


 今回は、初めて7日間の工程を組んで実習が行われたほか、実習経験者の紹介による京都大学の学生の方の参加や福島県土木部職員の研修受け入れ、同県農林水産部職員の視察受け入れ、多数の東北芸術工科大学卒業生の参加など、さまざまな変化がありました。


 自分にとっては、今回初めて若者の自主的な学びの場
(または若者が成長していく過程) が一種「神聖」に感じられました。また、自分が東北芸術工科大学の教員であった時やこの実習を私が中心になって始めた頃と比べて、自分も含めてここで学習できるランドスケイプデザイン、環境デザインの内容が格段に進歩していることに気がついた瞬間がありました。自主的な学びの場とは、こうして多くの人びとが気持ちを合わせ、時間をかけて経験と成果を蓄積しながらつくっていける一つの社会資産であるように一昨日くらいから考えています。


 おわりに、実習を支えてくださった早戸地区、三島町の方々、同地区の佐久間建設工業株式会社の皆様、実習を企画・運営されている東北芸術工科大学の渡部桂先生、同大学元教員の田賀陽介先生、私の他の招聘講師の方々、そして参加学生の皆さんへ感謝の意を表します。



追記


 早戸温泉環境整備実習のあらましを、本ブログ「東北風景ノート」の別の記事に書いています。ご関心をお持ちいただけた方には、ぜひご覧いただきたく思います。


地域の文理融合研究について: 福島県三島町早戸地区での取り組みを事例に
A thought on a holistic approach to regional studies: A case of the regional educational activity in Hayato district, Mishima Town, Fukushima Prefecture
https://shunsukehirose.blogspot.com/2020/01/thought-on-holistic-approach-to.html

 そして最後に、2009年の只見川流域景観調査に私を同行して早戸温泉遊歩道の存在を教え、その場で私が施工訓練のアイディアを思いつくとすぐに佐久間建設工業株式会社の佐久間源一郎社長 (当時。現会長) へお電話されて私をご紹介いただき、この実習が生まれるきっかけをつくってくださった遠藤光一・元福島県土木部技監が、2020年秋に逝去されたことを書き添えます (同氏には、実習10周年を迎えた826日にも早戸地区へお越しいただいていました)

 心から哀悼の意を捧げます。