2018/09/24

2018年日本地理学会秋季学術大会発表資料「景観の内容を重視した都市景観形成: 住民と学生による栃木県宇都宮市『釜川周辺地区』景観形成計画検討を例として」 Landscape content-based urban landscape formation: a case of collaboration between residents and students on the landscape planning for the urban district around the Kamagawa River, in Utsunomiya City, Tochigi Prefecture



2018/09/23
日本地理学会秋季学術大会発表スライド
Presentation-slides of the 2018 Autumn General Meeting of the Association of Japanese Geographers



 景観法は、その基本理念において良好な景観を「地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動との調和により形成されるものである」と定義して制定されています。しかし、同法の第二章以下の良好な景観の形成手法に含まれる旧来の表面的な規制的手法などが、基本理念の実現にとってそぐわないと評価できる場合があります。

 この研究は、栃木県宇都宮市の釜川周辺地区で共同発表者2名らが進める、住民と学生による景観の内容を重視した景観形成計画検討例の参照をもとに、景観法のより適切な運用の可能性について考察を行ったものです。

 

 ここでは、その研究内容をよりくわしく説明するためにまず大会発表要旨全文を引き写し、次いで発表スライド全点を掲載します。なお、関連リンクは各スライドに添えました。



I はじめに

 2004年制定の景観法は、都市、農山漁村、自然公園等を広く対象地域とする。同法に規定された景観計画を策定する景観行政団体は、45都道府県で698団体に及ぶ1)


II 景観法の理念と手法

 景観法の基本理念は第二条に規定される。「良好な景観は、地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動等との調和により形成されるものであることにかんがみ、適正な制限の下にこれらが調和した土地利用がなされること等を通じて、その整備及び保全が図られなければならない」2)
 良好な景観の形成手法としては、景観計画の策定、景観計画区域等における行為の規制や景観整備機構による支援などが用意される。


III 「宇都宮市景観計画」の概要

 宇都宮市は、2008年より景観条例と、市全域を景観計画区域として景観形成の基本目標を「宇都宮らしい美しい都市景観形成−豊かな風土に育まれたうつくしの都 (美しい宇都宮) づくり−」と定めた景観計画3) を施行する。6つの地域に5種の景観ゾーンを重ねて地域ごとに全体・ゾーン別景観形成方針を立て、5つの景観形成重点地区と1つの景観形成推進地区を定めている。


IV住民と学生による景観形成計画検討

 同市は、中心市街地を流れる釜川周辺地区を景観形成重点地区に指定する検討を進めている。当該地区で共同発表者は、大学院在学中の2013年12月より空き家を学生たちでイベント空間と作業場を持つ住居に改修し、地区の生活、文化、商業の振興を意図して展示や催事等の企画運営を行ってきた4) 。2017年3月からは、釜川周辺地区の景観形成重点地区指定検討に対して広く住民と学生へ地区の将来を考え、意見を交わすことを呼びかけ、シンポジウムや環境調査会などを「釜川から育む、まちのビジョン」として開催してきた。第6回は2018年2-3月実施の「KAMAGAWA DESIGN CLASS」で、景観法の理念にある良好な景観の成因「地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動等」に関した調査をもとに学生が各種専門家の協力を得て地区の将来像を検討し、現在は成果の公表を準備している。
 宇都宮市は、住民と学生の求めに応えて景観アドバイザー派遣制度を適用し、主発表者の講演会等が開かれてきた。


V 課題 - 景観の内容を重視した景観法の適切な運用へ

 住民と学生による検討は、同市景観計画の景観形成目標にある「宇都宮らしい」、「風土」に関した読解が十分でなく、地区ごとの景観形成方針、建築物等と屋外広告物に関する行為の制限が「旧来からの表面的で統一的な」5) 景観形成の域を出ていないことを課題と捉えて始められた。それゆえ、同検討では地区の風土性とそれに適った文化的な生活、生業などといった「景観の内容」が重視されている。
 この問題は、景観法の理念の実現に「表面的」な規制的手法がそぐわない場合がある制度設計に起因するとも考えられる。本研究では、同法の適切な運用について考察する。




1) 国土交通省|景観法の施行状況 (平成29年3月31日時点) http://www.mlit.go.jp/common/001139943.pdf
2) 景観法第二条第二項
3) 宇都宮市「宇都宮市景観計画」2016年第8回変更、I-13頁
4) KAMAGAWA POCKET http://kamagawapocket.com/
5) 日本学術会議土木工学・建築学委員会 景観と文化分科会
  「報告−我が国の都市・建築の景観・文化力の向上をめざして」2011年、5頁










参照: 国土交通省|景観法の施行状況 (平成30331時点http://www.mlit.go.jp/common/001139943.pdf (PDF) 景観行政団体数は713に。 

参照: 室田、2008 https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/43.3/0/43.3_655/_article/-char/ja/






参照: 東北風景ノート「2016年日本地理学会秋季学術大会発表資料『地域住民の常識知を生かした持続的な生活環境形成に関する研究 −
    茨城県大洗町磯浜地区における高潮対策事業への住民の対応を例として』

    http://shunsukehirose.blogspot.com/2016/11/2016-formation-of-sustainable-living.html
参照: 国土交通省都市「景観形成の経済的価値分析に関する報告書  http://www.mlit.go.jp/toshi/townscape/crd_townscape_tk_000010.html





参照: 東北風景ノート「風景資本論」 http://shunsukehirose.blogspot.com/2013/04/landscape-as-capital.html

参照: KAMAGAWA POCKET ウェブサイト|リノベーションレポート 2 http://kamagawapocket.com/2013/10/16/402
参照: KAMAGAWA POCKET ウェブサイト http://kamagawapocket.com/

参照: 無印良品 くらしの良品研究所|ローカルニッポン|裏通り。日々の風景をつくる人かまがわ文庫 (写真・文: 簑田理香) http://localnippon.muji.com/news/2662/
参照: 中村、2015 https://www.jstage.jst.go.jp/article/aija/80/716/80_2243/_article/-char/ja/

参照: KAMAGAWA POCKET ウェブサイト|釜川から育む、まちのビジョン http://kamagawapocket.com/2017/02/19/1141

参照: KAMAGAWA POCKET ウェブサイト|釜川の源流で絶滅危惧種を探せ! http://kamagawapocket.com/2017/04/20/1149



参照: KAMAGAWA POCKET ウェブサイト|デザインを通して、釜川の将来像を考える http://kamagawapocket.com/2018/02/15/1225
参照: 東北風景ノート「釜川の流域について知る − 地域の風土を考える」
http://shunsukehirose.blogspot.com/2017/10/thinking-about-milieu-of-region-in.html

参照: 「やまかいどう」30、栃木県埋蔵文化財センター、2002年 http://www.maibun.or.jp/c-info/pdf04/30.pdf






日本学術会議土木工学・建築学委員会 景観と文化分科会「報告−我が国の都市・建築の景観・文化力向上をめざして2011


参照: KAMAGAWA POCKET ウェブサイト|みんなでどう風景がつくれるか http://kamagawapocket.com/2017/09/21/1176



参照: Millennium Ecosystem Assessment http://www.millenniumassessment.org/en/index.html



参照: 宇都宮市「第2次宇都宮市上下水道基本計画」

参照: 宇都宮市「姿川・田川ハザードマップ」
http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/241/sugatagawa.tagawa.kouzui.hm.pdf



参照: 宇都宮市「宇都宮市財政白書」


参照: 東北風景ノート「2016年日本地理学会春季学術大会発表資料『地理学を生かしたランドスケイプデザイン#5 − 岐阜県飛騨古川における
    盆地霧発生を環境指標とした農村環境デザイン政策を例として』

    http://shunsukehirose.blogspot.com/2016/03/5-geographybased-landscape-design-5.html

参照: 廣瀬俊介「風土形成の一環となる環境デザインについて: 人文科学における研究成果の参照による風土概念検討を通して」
    『景観生態学』21 (1) 、日本景観生態学会、2016年、15-21頁 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jale/21/1/21_15/_article/-char/ja

参照: 室田、2008 https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/43.3/0/43.3_655/_article/-char/ja/

参照: 小浦、2013 https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/48/3/48_585/_article/-char/ja/
参照: 『景観法と地域政策を考える』勁草書房 http://www.keisoshobo.co.jp/book/b166033.html