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| 口頭発表資料 (スライドショー). p. 1 |
2026年6月13日(土) に徳島県三好市池田町で開催された日本景観生態学会2026年大会で、昨年当学会が開設したランドスケープデザインスクールの第1回に関した報告を、「JALEランドスケープデザインスクール第1回報告: 栃木県小山市「田園環境都市おやまビジョン」の具現化に向けた都市部の公園・緑地の計画への景観生態学の応用」と題して、企画運営協働者5名で行いました。その発表要旨に、当日用いたスライドショーに追記した内容を合わせて、このブログでも紹介します。概要、目的、方法、実施内容、結果…という発表要旨の流れに沿って、文体は常体から敬体に書き換え、内容をできるだけ平易に表してみたいと思います。
概要
日本景観生態学会 (Japanese Association for Landscape Ecology: JALE) の中に、ランドスケーププランニング&デザインワーキンググループが設けられています (今回の発表者5名による。以下、WGと省略) 。WGは、JALEランドスケープデザインスクール (以下、スクールと省略) を企画し、第1回を2025年9月- 2026年1月に実施しました。参加したのは、当学会の若手会員と景観生態学研究に携わる大学院生です。
目的
スクール開設の目的は、二つあります。一つは、景観の生態学的な計画・設計に関心をもつ若手会員のためにそれらを学べる機会を用意することです。もう一つは、企画運営者が教育プログラムを提供できるように、景観生態学に基づく景観計画・設計の探究を進めることです。WGメンバーのうち3名は、当学会が教科書として編んだ『景観生態学』1) 第11章「景観のプランニングとデザイン」を執筆しました。その作業の中で、編集者と執筆者は、生態学の進展や普及に対応した景観生態学に基づく景観計画・設計の探究が求められることについて確認し合い、それを同書に書いていました。
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日本景観生態学会編. 2022. 景観生態学. 272pp. 共立出版, 東京. https://www.kyoritsu-pub.co.jp/book/b10011796.html |
方法
スクールは、ある地域に短期滞在し、景観生態学に基づく景観計画・設計によって解決がめざせると考えられる地域課題に関して検討し、成果を地域に提出することを基本として構想しました。ここに、当地で行政や自然環境調査・研究に携わる方々や、景観計画・設計を専門とする方々らの学会外からの協力も受けて多角的に議論ができると、目的の達成により速やかに向かえるのではないかなどとも考えながら、第1回の企画を行いました。
デザインの指導については、今回はまず、景観生態学研究の成果を社会に実装することが景観の設計、ランドスケープデザインのどこまでを占め、他にどのような研究・技術領域に基づく検討が必要になるのか参加者に確かめてもらおうと意図しました。一般に、デザインに含まれるものと考えられている審美的な側面の追究は、今回は行わないことにしました。さまざまな環境技術を複合して用い、散策や休憩や会話やレクリエーションなどの空間の利用者の行動に対応して通路や座るのに適した場所の確保などをすることで、空間造形はかなりのところまで進みます。そして、そこには理性的であると評価できる景観の質が備わると考えられます2)。このことが、今回、審美的な側面の追究には特に留意しなかった理由となります。
実施内容
スクール第1回は、栃木県小山市で開催しました。同市は、渡良瀬遊水地のラムサール条約湿地登録 (2012)、ゼロカーボンシティ&ネイチャーポジティブ宣言 (2023) と持続可能性の追求を続け、2025年3月には30年後の未来を見すえた長期ビジョン「田園環境都市おやまビジョン」3)を策定しています。「田園環境都市」は、近世の街道と宿場町を軸に発達した都市部と、これを取り巻く田園部の調和を守り、そのために都市と田園の二つが揃う条件を活かし、それぞれをよりよくして次世代に受け渡すことをめざす考え方を表します。このようなことから、同ビジョンは、人間が自然から受けているさまざまな恵みのことをいう生態系サービスを保つ必要があること、そしてある環境がどれだけの水や生物を養え、人間の活動の影響を受け入れられるかをいう環境容量を前提とすることを基本に置いて考えられています。このような小山市にスクールの受け入れを依頼し、協力をいただくことができました。
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出典: 国土地理院. 地理院地図.https://https://maps.gsi.go.jp |
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出典: 小山市. 2025. 田園環境都市おやまビジョン. (2025-09-10取得, https://www.city.oyama.tochigi.jp/shisei/oyamavision/page008689.html) |
課題は、同ビジョンの実現に「都市部の公園・緑地の計画への景観生態学の応用」がどう有効にはたらくか考えることとしました。参加者は事前に文献調査を開始し、同市に3日間滞在して踏査を行い、講義を受け、研究課題を検討、設定した後、途中2回の報告会を含め、3ヶ月間で研究計画を作成しました。研究計画とは、どのような背景のもと、どのような目的で、どのような方法をとりながら研究を行うかを計画するものです。この過程を踏む中では、自身の研究の基礎となる先行研究を調べてまとめることもします。このような研究計画を、企画運営者は、報告書にとりまとめて小山市へ提出しました4)。
同市の都市部には、公園・緑地が最低限分布し5) 、歩行者専用道路に結ばれる範囲もあります。しかし、現地を実際に歩いて状態を観察、確認する踏査を行ってみると、街路樹は少なく、道路でも公園でも高木には強剪定、低木には刈り込みが施されている例があり、ことに道路では高木が十分な葉影を落とさないために夏は人が暑熱から守られず、公園によっては高木の枝葉の量が乏しく、樹林にすむ鳥類の活動に不向きで、外来種や園芸種の植物が道路と公園の別を問わず植えられているなどの、生物多様性と生態系サービスを回復し、保ってゆく上での課題が見当たります。このようなことも、踏査の際に各所で説明しました。
こうしたことを考え合わせての、地域環境の実態の細かな把握に始まる漏れのない緻密な思考の組み立ては、デザインの骨子となります。それゆえに、「都市部の公園・緑地の計画への景観生態学の応用」を課題として研究計画をしっかり立てることが、景観生態学に基づく景観計画・設計の研修に向くと考えました。
結果
WGの2名を含む10名が、9編の研究計画を作成しました。このうちの1編は、WGメンバー2名の共同研究によります。
小山市での研修の第3日目に、同市内で熊を見たと警察に通報があり、大型哺乳類の行動圏にどう留意するかについてなど、改めて参加者、企画運営者が共に確認し合う必要があると考え、山地に発する河川 (これまでにも同市への山地からのイノシシやニホンジカの侵入経路の一つと考えられてきた) と台地上の侵食谷を色分けした図を作成し、共有しました。
こうした状況の変化に対応した研究計画も、複数提案されました。以下は、ツキノワグマについての研究に従事する参加者による例です。
(前略) 都市南北方向に分布する緑地構造の特性と、その連結性の在り方に注目した。
踏査の結果、市域南北部の田園地帯と、市街地中心部に点在する都市公園との間には、
空間的・機能的な断絶が存在していることが確認された (図1) 6) 。
提案者はなお、先行研究で「都市における緑地連結の重要性と、野生動物侵入リスクの双方が指摘され」てはいるものの、地域の生態系の部分となる都市緑地の形成を図りながら「同時に人獣衝突リスクを空間的に回避する連結構造」を具体的に検討することは、十分に行われてきていないと指摘します。
河川沿いの連続緑地については野生動物の市街地侵入リスクを考慮し、必ずしも連
結を強化しない一方、市民の生活圏に近い都市計画道路沿いの緑地を回廊として活用
する点に本研究の特徴がある。これにより、市民の散策・レクリエーション空間の創
出と、生態系保全との両立を図る7)。
研究計画は、こう続けられます。
本提案を実現するためには、現地踏査、GIS を用いた空間解析、ならびにリスク評
価を段階的に組み合わせた研究計画が必要である。以下に、本研究で想定する調査・
解析・実践の流れを示す8)。
生態学/景観生態学研究に従事する研究者による、こうした都市部の公園・緑地とそのつながりのあり方に関した具体的な検討は、公共空間の計画を国や地方公共団体が進める際に、生態学的な段階、ないしはデザインの前段として、本来必要であったのではないでしょうか。参加者によるこれらの成果は、生態学的デザインを志向しながら生態学研究に従事する機会は持たずにきた筆頭発表者のような者にとって、そのような意味を持つと考えられました。また、本スクールの成果は、ビジョン具現化の課題を抽出し、解決を図る上で有用となる先行研究の整理や方法の提示を行っていることで、小山市の今後の施策の起案などにおいて参考としていただけるのではないかと考えています。
おわりに
以上、栃木県小山市の協力を受け、当学会としてこのような活動を行いました。
なお、デザインスクール第2回は、2026年7月31日(金)より8月2日(日)まで、北九州市で開催する予定です。審美的な側面の追究は留保したままとしますが、今回は公共空間のあり方からさらに歩を進め、生態系サービスの文化的サービスに含まれる散策や休憩、レクリエーションなどの利用者の行動を導く設えなども検討の対象とすることを想定しています。
参考・引用文献
1) 日本景観生態学会編. 2022. 景観生態学. 272pp. 共立出版, 東京.
2) 日本景観生態学会ランドスケーププランニング&デザインWG. 2026. JALEランドスケープデザインスクール2025 プログラム. 10pp.
3) 小山市. 2025. 田園環境都市おやまビジョン. (2025-09-10取得, https://www.city.oyama.tochigi.jp/shisei/oyamavision/page008689.html).
4) 日本景観生態学会ランドスケーププランニング&デザインWG. 2026. JALEランドスケープデザインスクール2025 プログラム. 10pp.
5) 小山市の市民一人当たりの都市公園面積は, 2025年3月末の時点で9.28m2/人. 出典: 小山市. 2024. 都市と緑のマスタープラン. https://www.city.oyama.tochigi.jp/kurashi/toshikeikaku/machizukuri/page007202.html (2026-06-15参照). 都市公園法施行例で, 住民一人当たりの都市公園の敷地面積の標準は10m2/人以上と定められる. 出典: デジタル庁. 2025. 都市公園法施行例. https://laws.e-gov.go.jp/law/331CO0000000290 (2026-06-15参照).
6) 戴 帰航. 2026. 小山市における都市公園を拠点とした南北緑地連結の提案. JALEランドスケープデザインスクール2025 成果報告書: 13-15.
7) 戴同書.
8) 戴前掲書.
















