2013/03/24

浪江の風景 絵はがき 2005 Postcards of Namie, Fukushima, 2005


この絵はがきは「浪江の風景を読む会」が2005年に制作し、福島県が発行したものです。

私は、国道114号浪江権現堂工区の環境設計を2004年から担当しました。その調査段階において、町民有志と同会を結成し、浪江町の風土性を把握した上で、風土の部分として道路環境の構想、計画、設計を進めました。
 

絵はがきは、調査の成果を浪江町に暮らす方々と共有する目的で制作しました。私が、文章の執筆とスケッチを手がけています。 また、2006年には、これらをもとに『浪江の風景読本』を制作、発行してもいます。








  
なお、道路の環境設計については、次のようにそのあり方を定めました。


設計思想「火除けの道」

ひらけた道すじなりに、千鳥に並ぶ木々は
冬から春にかけて吹く西風や、時に火の粉を受けとめる
木々とその足もとの丈の低い植物、江筋の水は、
生き物の暮らしの場の一部となり、
人びとの目を楽しませもする

暑い盛りには木々の葉影が落ち、
江筋に沿って心地よい涼風のわたる道となる
水面から蒸発する水はあたりの空気を湿し、
雨水は敷石のすきまから大地に染みこんで
土を湿し、地下水をやしなう

春立つ候には裸参りの列が通り、
柄杓を持つ人びとが道とまわりの建屋とを行き来する
新しい一年の無火災を願い、
安政の大火を教訓として思い返すための日、
この道は祈りの場所ともなる

千鳥に並ぶ木々は、道の上を舞う塵から
車の往来による騒々しさまでをかき消すはたらきもする
このようにして火除けの道は、町場の歴史と
浪江の自然と生きる知恵とを次代に伝える役目を担う
そして、人びとがともに生きるための新しい結も


また、この絵を描いて道路の基本設計をまとめた後、細部の寸法をすべて指定した実施設計図を作成しています。


それから、キューブを開くごとに違う絵があらわれる玩具を、郡山の広告代理店の方と制作しました。2005年に「浪江の風景 絵はがき」を、2006年にこの玩具を、「十日市」の日に浪江小学校で催した「浪江の風景を読む展覧会」へお越しいただいた方々へお配りしていました。
玩具の名前は、「絵はがき」や『浪江の風景読本(この写真の玩具後方に写っています)』に対応させたいといろいろ調べ、見るだけでなく手で動かして遊ぶおもちゃ絵というものが江戸時代にあったと知り「浪江の風景 おもちゃ絵」と付けました。
立方体に切った木に私の絵が刷られたシールを貼って組み立てるのですが、その過程もまた楽しかったのを思いだします。下の写真は、絵はがき、読本、おもちゃ絵のグラフィックデザインを共通して手がけた春田ゆかり氏に提供いただきました。


そして、2011年の福島第一原発事故によって、浪江町は警戒区域/計画的避難区域に指定されることになりました。『浪江の風景読本』については、 帰還が困難になった同町の方々のために増刷、配布されてはいかがですかと町役場の方々に提案を行いました。
役場の皆さんは非常にお忙しくされていますが、少しずつ検討を進められているようです。
私も、継続してお手伝いができていければと望んでいます。