2014/09/21
日本地理学会秋季学術大会発表スライド
Presentation-slides of the 2014 Autumn General Meeting of the Association of Japanese Geographers
廣瀬俊介 (環境デザイナー、東京大学空間情報科学研究センター 協力研究員)
Shunsuke HIROSE (Landscape designer, Cooperative Research Fellow of the Center for Spatial Information Science at the University of Tokyo)
本大会での口頭発表に用いたスライド全点を掲載いたします。
また、質疑応答に際していただいた指摘を受けて「今後の課題」を簡単に整理してもいます。
本内容は、かつて手がけた都市計画マスタープランを題材としたもので、2014年7月12日に催された「早稲田まちづくりシンポジウム 2014」における報告を基礎としています。
その際、特に準備に当たり、都市計画を専門とする研究者、技術者の方々にご助言をいただけたことが大きかったと感謝しております。
それを踏まえて精査した内容を、本大会で発表しました。
今後は、こうした土地利用、居住環境形成の技術行使に向けて、さらに力を注いで参りたい考えです。
なお、このような事例には、津波被災地の再興やその他の東北地方各地の地域経営策を考える上で幾分かご参考としていただける点が含まれるかと思いますゆえ、この「東北風景ノート」に投稿をいたします。
以下、まず発表要旨の全文を、次いでスライド全点を載せることにいたします。
I はじめに
ランドスケイプデザインは、近代都市の環境劣化への対処であった1858年からのニューヨーク市セントラルパーク整備を起源とする環境形成技術である。
日本では造園と翻訳されて庭園設計術との混同を生じるなど、土地利用の技術として都市計画や土木のように社会的認知を得ていない。
それゆえ、改めてランドスケイプデザインの本義を地理学を生かして追求し、生態学的土地・資源管理に活用すべきことを、2013年秋季学術大会、2014年春季学術大会に続いて提案する。
II 景観生態学的考察
2002年より2箇年、吉備町 (面積36.37m2、当時の人口14,694人。現有田川町) 都市計画マスタープラン1) を高嶋克宜 (博士、地域経済学。当時株式会社アイ・エヌ・エーに所属)
と作成した。
筆者は、図1の地形発達史と土地利用変遷史の相関性評価など、土地・資源管理の景観生態学的考察を基本に作業を行った。
III 計画思想「蜜柑の香せる都市」の設定
同町域では、有田川右岸 (北岸) の山地 (三波川帯) が含有鉱物質と方位の面で蜜柑栽培に適し、左岸の丘陵 (秩父帯) がこれに次ぎ、同川の氾濫原は米作地帯とされ、残る河岸段丘の段丘面に都市の範囲が限られていた。
これらは、農業生産面で理に適い、都市の規模は人間的にとどめられ歩いて暮らすのに向き、従ってエネルギー消費は少なく済み、段丘崖に存する斜面林や段丘面のため池が緑地と水辺を供し (段丘面の草地は不足) 、都市が氾濫原より高い地盤上にあることで水害に遭わないなどと評価できた。
上記の利点継承と課題解決を基本に、同町の理想の将来像を「蜜柑の香せる都市」と設定した。そして、既定の土地開発等への代償として既成市街地における自然度、人間性を高める措置を軸に据えて、目標年次を20年後 (2023年)とする都市計画を作成した。
注
1) 高嶋克宜、廣瀬俊介、2004「蜜柑の香せる都市—吉備町都市計画マスタープラン」吉備町