2015/03/28
日本地理学会春季学術大会発表スライド
Presentation-slides of the 2015 Spring General Meeting of the Association of Japanese Geographers
本大会での口頭発表に用いたスライド全点を、掲載いたします。
なお、生態学的環境形成の実践に関した技術的説明を追記しました。
2015/11/26 追記
災害復旧事業は、現在、各所で防潮堤建設が進む段階にあります。
しかし、防潮堤の規模や海への視線の遮断の影響を実見し驚かれた当地の方々が、建設の一時停止と再検討を基礎自治体や宮城県、岩手県へ求める動きを起こしつつあります。 私は、これらの方々の要請を受けて他の研究者有志と共に協力を行っています。
建設が開始されたから諦めねばならないということは、ありません。
気仙沼市でいえば、三陸ジオパークに含まれ、目下のところ日本で唯一チッタスローに選ばれていることなどが、現在進む工事を見直すことでより復興に生きるようにできると、ランドスケイププランニング、ランドスケイプデザイン (本来は土地・資源の生態学的な持続的利用に関した研究・技術領域の意味を持ちます) 研究者・技術者として考えます。
また、そのための方法については、すでに本ブログで私の実践を中心に説明してきています。
発表要旨 (抄録) :
筆者は、地理学を生かしたランドスケイプデザインの応用を志向する中で、東日本大震災被災地の一つ、気仙沼市本吉町小泉地区において、住民・研究者・技術者有志と地区再生のあり方を検討している。2013年秋季学術大会に続き、その第2回報告を行う。
宮城県は、同地区へ長さ800m、底部の幅90m、高さ海抜14.7mの防潮堤を建設する計画を策定し、2014年11月に落札決定も済まされている。しかし、「原形復旧・効用回復」を目的とする災害復旧事業は環境影響評価法と宮城県環境影響評価条例の適用除外となり、同県は住民の意見を聴取し適切に合意 を形成する段階を踏むことなく防潮堤建設計画を進めた。同地区住民はこれに対して自主勉強会開催を続け、2014年8月には国土交通省海岸室へ防潮堤建設 計画の見直しを求める陳情書を提出した。
筆者ら研究者・技術者は小泉地区住民に協力を求められ、持続する地区の再生を目的に2013年5月から災害復旧代替案を共同検討してきた。遠浅の砂浜海岸 と河口から約4.5km上流まで3度未満の緩勾配が続く地形や、アサリやカキの類が戻りサケやアユやウナギの遡上のある水域の生物生産に照らし、防潮堤は 新設される三陸沿岸道路盛土部と兼用とすることを、提案の骨子とした。これは海岸と河口、津波痕跡湿地等を、平時は人間の生存条件を成り立たせる生物生産の場とし、非常時には津波や河川洪水を減勢させる緩衝帯「前浜」として生かす考えに基づく。
生態系サービスを生産する自然環境の保全は、人間の経済活動ひいては持続社会の基礎条件となる。その理解に基づく社会資本整備の普及を促すことを急務と考えている。
参照:
谷下雅義、浅田拓海「東北地方太平洋地震津波による南三陸町行政区別犠牲者率の影響要因」『土木学会論文集』A1 (構造・地震工学) 、66-70頁、2014年
http://ci.nii.ac.jp/naid/130004557099
横山勝英「海岸の多様性と防潮堤計画の画一性」『日本リスク研究学会誌』24 (2)、93-99頁、2014年
http://ci.nii.ac.jp/naid/40020247464
郭じゅん、加藤大祐、櫻井優一、西崎智紀、福島和矢「気仙沼市小泉地区における防潮堤建設計画に関する費用便益負担: 公共政策の経済評価」東京大学公共政策大学院、2014年 (PDF)
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/courses/2013/documents/graspp2013-5113090-3.pdf
永幡嘉之『巨大津波は生態系をどう変えたか』講談社、2012年http://bookclub.kodansha.co.jp/product?code=257767
発表要旨ダウンロード:
http://researchmap.jp/read0199902
*項目「講演・口頭発表等」に本件に関して記載があります。
2015/10/30 追記
第41回土木学会トークサロン「災害復旧とレジリエンス再考」における河田恵昭関西大学教授 (中央防災会議防災対策実行会議委員) の講演と質疑応答を私的に記録した文書を、Google Driveを用いて公開しました。
https://drive.google.com/file/d/0BxoxSvPGDhLwZllVZXJxMC1qb0k/view
同教授は、「何年に一度の津波という、確率的な概念の適用を止める」「後背地のまちづくりと一体となった海岸構造物の設計を進める」「まちづくりの中で防波堤を考え ることは、中央防災会議・東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会 (座長: 河田恵昭) に被災地の専門家はほとんど欠席し、この考え方を理解しなかった」とスライドに記載し、口頭でその根拠と背景を示されました。
記事本文中で報告した宮城県の災害復旧事業は、中央防災会議の決定と相容れないものであるとのことです。
横山勝英「海岸の多様性と防潮堤計画の画一性」『日本リスク研究学会誌』24 (2)、93-99頁、2014年
http://ci.nii.ac.jp/naid/40020247464
郭じゅん、加藤大祐、櫻井優一、西崎智紀、福島和矢「気仙沼市小泉地区における防潮堤建設計画に関する費用便益負担: 公共政策の経済評価」東京大学公共政策大学院、2014年 (PDF)
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/courses/2013/documents/graspp2013-5113090-3.pdf
永幡嘉之『巨大津波は生態系をどう変えたか』講談社、2012年http://bookclub.kodansha.co.jp/product?code=257767
発表要旨ダウンロード:
http://researchmap.jp/read0199902
*項目「講演・口頭発表等」に本件に関して記載があります。
2015/10/30 追記
第41回土木学会トークサロン「災害復旧とレジリエンス再考」における河田恵昭関西大学教授 (中央防災会議防災対策実行会議委員) の講演と質疑応答を私的に記録した文書を、Google Driveを用いて公開しました。
https://drive.google.com/file/d/0BxoxSvPGDhLwZllVZXJxMC1qb0k/view
同教授は、「何年に一度の津波という、確率的な概念の適用を止める」「後背地のまちづくりと一体となった海岸構造物の設計を進める」「まちづくりの中で防波堤を考え ることは、中央防災会議・東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会 (座長: 河田恵昭) に被災地の専門家はほとんど欠席し、この考え方を理解しなかった」とスライドに記載し、口頭でその根拠と背景を示されました。
記事本文中で報告した宮城県の災害復旧事業は、中央防災会議の決定と相容れないものであるとのことです。