2015/06/06
日本景観生態学会 第25回全国大会 シンポジウム「景観生態学と風土性・まちづくり」報告スライド
Presentation-slides of the Symposium of the 25th Annual Meeting of Japan Association for Landscape Ecology
本発表は、2014/03/28 日本地理学会春季学術大会発表「地理学を生かしたランドスケイプデザイン #2 福島県浪江町における住民との地生態学的調査を例として」の
内容を基礎に、哲学や宗教学の参照にもとづく風土考究の検討を加えたものとしています。
I はじめに – 環境デザインと風土
環境デザイン (landscape
architecture、landscape design、または environmental
design) は、近代都市の環境劣化への対処であった1858年からのニューヨーク市セントラルパーク整備を起源とする環境形成技術である 1) 。しかし、わが国では在来の庭園設計術との混同や、環境条件の違う米国や欧州の安易な模倣が一般的で、日本的応用は不十分である。
これに対して筆者は、日本における環境デザインを (土地の自然に人間がはたらきかけてつくり、そう認識する、「生活世界」と捉えられる 2) ) 風土の理解の上に実行すべきであると考えるに至った。その実践報告をここで行いたい。
これに対して筆者は、日本における環境デザインを (土地の自然に人間がはたらきかけてつくり、そう認識する、「生活世界」と捉えられる 2) ) 風土の理解の上に実行すべきであると考えるに至った。その実践報告をここで行いたい。
II「浪江の風景を読む会」としての景観生態学的調査
2004年より3箇年、筆者は福島県県双葉郡浪江町の中心市街を通る国道114号線改築設計に、調査段階から住民有志と「浪江の風景を読む会」を発足して携わった 3) 。
同会は3年間で14回開いた。景観観察を中心において既往研究を総括しつつ、住民と土地の風土性の理解を深めながら将来を構想する方法は、地理的合理性から逸脱せず持続可能な土地と資源の利用を検討するために有効であった。
III 設計思想「火除けの道」の設定
「浪江の風景を読む会」を通して、国道114号線改築の設計思想を「火除けの道」と設定した。そして、町全域の風土性理解の上に、特に安政6年 (1859) の大火を教訓として都市防火を強化し、火防祈祷祭「裸参り」を始めた先人の叡智を参考とし、防火ひいては防災を中心に総合的環境形成を図った。
IV 地域経営に資する景観生態学の内容
土地の様態を通してその風土性を読み解き、地域の持続的経営を図るために景観生態学は有効と目せる。自然科学とともに社会科学、人文学の理解と適用に努め、ここに報告するような環境形成技術の行使を実証研究と位置づけて鍛えてゆくことで、景観生態学はその真価を発揮できよう。
注
1) 廣瀬俊介 2010「オルムステッドがめざした社会改革」『テキスト ランドスケープデザインの歴史』学芸出版社、25頁
2) 薗田稔 1990『祭りの現象学』弘文堂、248頁にある和辻哲郎の分析 (『風土』岩波書店、1935) をもとにした論説を参照
3) 廣瀬俊介 2005「風土形成序説—浪江町の風景を読むことを通して」『季刊東北学第五号』東北芸術工科大学 東北文化研究センター、198-230頁