2024/05/04

自然とつながる暮らしのためのランドスケープデザイン: 坂元植林の家「さとのえ」外構整備計画・設計説明資料 For a life connected to nature Landscape design: Sakamoto Afforestation House 'Satonoe' exterior environmental planning and design briefing document

 

 

 

 「坂元植林の家 さとのえ」整備事業に、ランドスケープデザイナーとして参加しています。この記事では、さとのえのランドスケープデザイン、外構整備計画・設計のあらましについて30点のスライドを使ってお伝えします。

 さとのえ (里の家の意。宮城県柴田町) は、林業と住宅建築業を併せて行うサカモトグループのブランド「坂元植林の家」のモデルハウスとして企画されました。同グループは、このモデルハウスを地域の風土に則して整備し、自然と人の関係が保たれた暮らしの価値を示そうと企画を立てました。そのことで地域の森林が守られ、水源涵養ができ、物質循環が保て、雇用機会を持ち続けられ、地域の自然と文化ひいては地域の個性が引き継がれて、地域社会が持続でき、自社も持続できると考えてのことです。私は、この社会的意義の大きな事業に、建築家山田貴宏さんの推挙を受けて参加しました。

 さとのえの計画対象地は、低山から丘陵へ連なる鞍部の尾根から北向きの斜面にかけて、かつて農地とされ、現在はウメ、キリ、カシワ、クヌギなどが点々と植えられた土地とされました。その中で、私たちは水が流れやすく土地がやせやすい尾根に人の活動の場の中心を置くことを決めました。建物は、一棟の規模を大きくし過ぎないことや、季節や日々の天候によって建物と外構とその中間に当たる空間を自由に選んで使えるように分棟されました。建物は、日射しや風、暑い時期ならば夕方から夜にかけて温度が下がって重くなり山側からゆっくりおりてくる冷気を取り入れられる細かな位置とつくりを検討し、設計されてもいます。冬季の風向の67.5 %を占める西風、南西風1) に対しては、尾根の南側の斜面に生える木々が風を上空へ一度逸らす効果を補い得るよう、そして果実を食物にできるという別の役割を兼ねることにも期待をして、地区の農家によく見られるカキノキ、ユズ、イチジクを1本ずつ植えています。その他、ランドスケープデザインの考え方やおおよその中身については、スライドをご覧ください。

1) 四季別風向 [ 昭和32-46 (1957-1971) 大河原局地農気象観測所] 出典: 柴田町史編さん委員会編 (1989) 柴田町史 通史篇 I. 柴田町. p. 14, 18.

 以下は、サカモトグループとビオフォルム環境デザイン室が、さとのえについてそれぞれ設けているホームページです。

さとのえ—里山で自然とともにある暮らし|坂元植林の家
https://www.sakamoto-shokurin.com/satonoe/
「さとのえ」プロジェクト@宮城県柴田町|ビオフォルム環境デザイン室
https://bioform.jp/project/satonoe


担当一覧 (坂元植林の家ウェブサイト掲載情報に一部補足):

建築設計: 山田貴宏 (ビオフォルム環境デザイン室)
建築施工: 株式会社サカモト
左官: 原田左官工業所
ランドスケープデザイン: 廣瀬俊介 (風土形成事務所)
建築外構施⼯: 小畑英智 (庭⼀株式会社)
イラストレーション: 藤井信明 (AIRWORKS)
広報: 簑田理香 (地域編集室簑田理香事務所)
視覚伝達デザイン: 須田将仁 (Takuu tuore)
WEBコーディング: 大塚康宏 (Fundemic)

追記:
 「坂元植林の家 さとのえ」整備事業は、ウッドデザイン賞2023 最優秀賞「環境大臣賞」に選ばれました。同賞は「木で暮らしと社会を豊かにするモノ・コトを表彰し、国内外に発信するための顕彰制度」とのことです。さとのえは、その中の「木を活かして森林・林業や地域・社会の持続性を向上させている」事業を対象としたソーシャルデザイン部門に応募されました。

ウッドデザイン賞2023|一般社団法人 日本ウッドデザイン協会 プレスリリース
https://www.wooddesign.jp/slaker_news/upload/files/attach_file1_20231109acaa9af38407f0381dcc5a6bb23a6470c8de2ed7.pdf?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTAAAR2-3BVOd4kW8BdRpNGgTUTPiajqPPyuoITtWyujFBb-74ohCSQhVbTANjs_aem_AXOFp9m8AyCHaje53Sehw5Phe2p5bRjqb81m7SD9jFndfcXEVYa9LbFaCdyiYDS6o4CUe_nlYAEh0Nt5veXhFekP

 

 

 

参照: 坂元植林の家|さとのえ  https://www.sakamoto-shokurin.com/satonoe/



 

 


 


 

 

 







 

 

 

 


2024/02/06

中山間地域の棚田の価値 (環境的観点から) Value of terraced rice paddies in mountainous areas: from an environmental perspective)

 

 


 2024118日、栃木県棚田勉強会 ( 栃木県棚田地域将来ビジョン策定事業) で、「中山間地域の棚田の価値 (環境的観点から) 」と題して発表を行いました。報告の目的は、棚田の価値を環境の面から考えるうえで役立つと思う観点を農業者、市民、行政担当者の方々に向けてお伝えすることとしました。そして、「生物と生態系」「水質浄化」「防災・減災」「放牧による棚田の保持」の4つの観点から、水田、棚田に関した学術文献の参考となる箇所を紹介しています。

 
なお、それらの文献には、202411日に発生した能登半島地震被災地の復興に際しても、今後、中山間地域における農用地再生・保全の参考となる面があるように思います。そう考えて、上記の勉強会で用いた発表資料を公開することにいたしました。

 本ウェブログは、2011311日に発生した東日本大震災の被災地の復興を微力ながらも支援できればと開設したものです。わが国では、その後も数多くの地震、豪雨などの災害が起きています。いずれの被災地でも、地域の自然、歴史、文化に合ったかたちで、ゆえに持続的に、さらにはそこに暮らしてこられた方々の地域への愛着が尊重されながらの復旧・復興が図られてゆくことを願っております。


 「地域の自然、歴史、文化に合った」には、例えば引用文献にあるのですが、「過去の崩落土塊上に造成された棚田の場合、地盤が軟弱なだけでなく、かつての地盤が滑り面となって再崩落しやすい条件にある」ことへの留意なども含まれると考えています。

出典: 中島敦司・中野慎二・Ganeindran Rainoo Raj・水町泰貴「棚田地形が土砂崩落の軽減に与える影響」『日本緑化工学会誌』43 (1)、日本緑化工学会、2017年、199-202
DOI: https://doi.org/10.7211/jjsrt.43.199

 上記引用文は、こう続けられます。「このため、滑り面に降雨を浸透させることは崩落の危険性があるが、棚田は水田であるため『床 (とこ) 』と呼ばれる遮水層を毎年の代掻きによって整備する。田起こしが完了した田んぼに水を張って、土をさらに細かく砕き、掻き混ぜて、土の表面を平らにするこの作業は、棚田の遮水層を維持、管理する役割を持ち、その結果、棚田のテラス構造自体が崩壊することを防ぐ効果があると考えられた」。

 どこで暮らしと生業を営むかは、日本列島のように地震活動や火山活動が活発で風水害が頻繁に起こる地域で、自然災害による危機をできるだけ回避するために、根本的に肝要なことといえます。

 このことは、さまざまな角度から検証してみて初めて結論づけられます。また、予測しきれない自然の変化やそれらを顧みないことから高められる人災の危険性に備えるべく、「結論」が仮説の域を出ないことも留意しておく必要があります。

 私は、能登半島の地理についてほとんど知らず、東日本大震災被災地でのようには活動できないと思います。ただし、北陸には本質的な地域復興のためにはたらけるであろう方々がおられると思います。求めがあればそうした方々の復興支援に協力し、あるいはこの方々の日常業務をなんらか支えることで復興支援のための時間を確保いただくようなかたちでのプロボノ活動が可能ではないかと考えているところです。



栃木県棚田勉強会
( 栃木県棚田地域将来ビジョン策定事業)
主催: 栃木県農村振興課
事務運営: 有限責任事業組合 風景社
コーディネイト: トチギ環境未来基地





出典: 日鷹一雅・嶺田拓也・大澤啓志「水田生物多様性の成因に関する総合的考察と自然再生ストラテジ」農村計画学会誌27 (1)、農村計画学会、2008年、20-25DOI: https://doi.org/10.2750/arp.27.20

出典: 清水裕太・望月秀俊・松森堅治「中山間地における圃場整備によって造成された棚田の地下水流動特性

日本水文科学会誌50 (2)、日本水文科学会、2020年、71-83DOI: https://doi.org/10.4145/jahs.50.71

出典: 中島峰広「棚田の分布と特質」農業土木学会誌70 (3)、農業農村工学会、2002年、195-198DOI: https://doi.org/10.11408/jjsidre1965.70.3_195

出典: 清水裕太・望月秀俊・松森堅治「中山間地における圃場整備によって造成された棚田の地下水流動特性」日本水文科学会誌50 (2)、日本水文科学会、2020年、71-83DOI: https://doi.org/10.4145/jahs.50.71

出典: 日鷹一雅・嶺田拓也・大澤啓志「水田生物多様性の成因に関する総合的考察と自然再生ストラテジ」農村計画学会誌27 (1)、農村計画学会、2008年、20-25DOI: https://doi.org/10.2750/arp.27.20

出典: 廣瀬俊介風景資本論朗文堂、2011年、36-37https://shunsukehirose.blogspot.com/2013/04/landscape-as-capital.html


出典: 帰山雅秀「水辺生態系の物質輸送に果たす遡河回遊魚の役割」日本生態学会誌55 (1)2005年、51-59 DOI: https://doi.org/10.18960/seitai.55.1_51


出典: 帰山雅秀「水辺生態系の物質輸送に果たす遡河回遊魚の役割」日本生態学会誌55 (1)2005年、51-59 DOI: https://doi.org/10.18960/seitai.55.1_51

出典: 鷹一雅・嶺田拓也・大澤啓志「水田生物多様性の成因に関する

総合的考察と自然再生ストラテジ農村計画学会誌27 (1)、農村計画学会、2008年、20-25DOI: https://doi.org/10.2750/arp.27.20



出典: 阿南光政、弓削こずえ、中野芳輔、大平裕「水田の水利用が生態系に及ぼす影響評価」九州大学大学院農学研究院学芸雑誌62 (1)号、91-100を廣瀬改変 (2023)。調査地: うきは市浮羽町 https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/8881/p091-100.pdf


 

出典: 金子文宜「水田や畑地が生命や環境を守るはたらき印旛沼流域水循環健全化調査研究報告』1

中村俊彦・小倉久子編、印旛沼流域水循環健全化会議・千葉県、2012年、22-23https://inba-numa.com/html/file/torikumi/mitameshiseika/mitameshiseika_04.pdf

出典: 金子文宜「水田や畑地が生命や環境を守るはたらき印旛沼流域水循環健全化調査研究報告』1

中村俊彦・小倉久子編、印旛沼流域水循環健全化会議・千葉県、2012年、22-23https://inba-numa.com/html/file/torikumi/mitameshiseika/mitameshiseika_04.pdf


出典: 金子文宜「水田や畑地が生命や環境を守るはたらき印旛沼流域水循環健全化調査研究報告』1

中村俊彦・小倉久子編、印旛沼流域水循環健全化会議・千葉県、2012年、22-23https://inba-numa.com/html/file/torikumi/mitameshiseika/mitameshiseika_04.pdf

南雲俊之・松本直樹・海野達也「森林・茶園・水田複合流域における土地利用パターンと河川水窒素

リン濃度のパス解析」日本土壌肥料学会講演要旨集 - 2010年度北海道大会セッションID: P1-2 DOI: https://doi.org/10.20710/dohikouen.56.0_13_2


出典: 中島敦司・中野慎二・Ganeindran Rainoo Raj・水町泰貴「棚田地形が土砂崩落の軽減に与える影響」

日本緑化工学会誌43 (1)、日本緑化工学会、2017年、199-202DOI: https://doi.org/10.7211/jjsrt.43.199

出典: 中島敦司・中野慎二・Ganeindran Rainoo Raj・水町泰貴「棚田地形が土砂崩落の軽減に与える影響」

日本緑化工学会誌43 (1)、日本緑化工学会、2017年、199-202DOI: https://doi.org/10.7211/jjsrt.43.199

出典: 中島敦司・中野慎二・Ganeindran Rainoo Raj・水町泰貴「棚田地形が土砂崩落の軽減に与える影響」

日本緑化工学会誌43 (1)、日本緑化工学会、2017年、199-202DOI: https://doi.org/10.7211/jjsrt.43.199

出典: 中島敦司・中野慎二・Ganeindran Rainoo Raj・水町泰貴「棚田地形が土砂崩落の軽減に与える影響」

日本緑化工学会誌43 (1)、日本緑化工学会、2017年、199-202DOI: https://doi.org/10.7211/jjsrt.43.199

出典: 中島敦司・中野慎二・Ganeindran Rainoo Raj・水町泰貴「棚田地形が土砂崩落の軽減に与える影響」

日本緑化工学会誌43 (1)、日本緑化工学会、2017年、199-202DOI: https://doi.org/10.7211/jjsrt.43.199

出典: 中島敦司・中野慎二・Ganeindran Rainoo Raj・水町泰貴「棚田地形が土砂崩落の軽減に与える影響」

日本緑化工学会誌43 (1)、日本緑化工学会、2017年、199-202DOI: https://doi.org/10.7211/jjsrt.43.199

出典: 中島敦司・中野慎二・Ganeindran Rainoo Raj・水町泰貴「棚田地形が土砂崩落の軽減に与える影響」

日本緑化工学会誌43 (1)、日本緑化工学会、2017年、199-202DOI: https://doi.org/10.7211/jjsrt.43.199

出典: 綉紡・高瀬恵次「棚田流域と山林地流域の直接流出特性比較」農業土木学会論文集2007 (248)

農業農村工学会、137-143DOI: https://doi.org/10.11408/jsidre1965.2007.137

出典: 高橋佳孝「耕作放棄地における放牧による保全管理」農村計画学会誌21 (4)2003年、348-355DOI: https://doi.org/10.2750/arp.21.337

出典: 高橋佳孝「耕作放棄地における放牧による保全管理」農村計画学会誌21 (4)2003年、348-355DOI: https://doi.org/10.2750/arp.21.337
出典: 高橋佳孝「耕作放棄地における放牧による保全管理」農村計画学会誌21 (4)2003年、348-355DOI: https://doi.org/10.2750/arp.21.337
出典: 公益社団法人 山口県畜産振興協会|山口型放牧研究会 https://yamaguchi-lin.jp/yamahaou/yamahaou-2.html (2024-01-06 参照)
出典: 高橋佳孝「耕作放棄地における放牧による保全管理」農村計画学会誌21 (4)2003年、348-355DOI: https://doi.org/10.2750/arp.21.337
出典: 高橋佳孝「耕作放棄地における放牧による保全管理」農村計画学会誌21 (4)2003年、348-355DOI: https://doi.org/10.2750/arp.21.337
出典: 高橋佳孝「耕作放棄地における放牧による保全管理」農村計画学会誌21 (4)2003年、348-355DOI: https://doi.org/10.2750/arp.21.337
出典: 高橋佳孝「耕作放棄地における放牧による保全管理」農村計画学会誌21 (4)2003年、348-355DOI: https://doi.org/10.2750/arp.21.337
出典: 高橋佳孝「耕作放棄地における放牧による保全管理」農村計画学会誌21 (4)2003年、348-355DOI: https://doi.org/10.2750/arp.21.337
出典: 高橋佳孝「耕作放棄地における放牧による保全管理」農村計画学会誌21 (4)2003年、348-355DOI: https://doi.org/10.2750/arp.21.337

出典: 福田栄紀「放牧利用される放棄農林草地でのスイバに対するヤギと牛の採食特性」日本草地学会誌54 (1)

2008年、40-44DOI: https://doi.org/10.14941/grass.54.40

出典: 福田栄紀「放牧利用される放棄農林草地でのスイバに対するヤギと牛の採食特性」日本草地学会誌54 (1)

2008年、40-44DOI: https://doi.org/10.14941/grass.54.40

出典: 丸居 篤・藤堂乃夫宏・岡安崇史・後藤貴文・衛藤哲次・塩塚雄二・高橋秀之「放牧による耕作放棄地解消がイノシシの行動に及ぼす影響」

日本暖地畜産学会会報57 (1)2014年、17-22DOI: https://doi.org/10.11461/jwaras.57.17

出典: 丸居 篤・藤堂乃夫宏・岡安崇史・後藤貴文・衛藤哲次・塩塚雄二・高橋秀之「放牧による耕作放棄地解消がイノシシの行動に及ぼす影響」

日本暖地畜産学会会報57 (1)2014年、17-22DOI: https://doi.org/10.11461/jwaras.57.17

出典: 丸居 篤・藤堂乃夫宏・岡安崇史・後藤貴文・衛藤哲次・塩塚雄二・高橋秀之「放牧による耕作放棄地解消がイノシシの行動に及ぼす影響」

日本暖地畜産学会会報57 (1)2014年、17-22DOI: https://doi.org/10.11461/jwaras.57.17
出典: 高橋佳孝「耕作放棄地における放牧による保全管理」農村計画学会誌21 (4)2003年、348-355DOI: https://doi.org/10.2750/arp.21.337

出典: 廣瀬裕一「農村計画分野での最近10年の再生可能エネルギー研究の動向」農村計画学会誌33 (3)2014年、356-361DOI:
https://doi.org/10.2750/arp.33.356

出典: 廣瀬裕一「農村計画分野での最近10年の再生可能エネルギー研究の動向」農村計画学会誌33 (3)2014年、356-361DOI:
https://doi.org/10.2750/arp.33.356

出典: 鈴木知之「牛のあい気に含まれるメタンの畜舎での測定」畜産技術2022 (803-Apr.)、畜産技術協会、2022年、41-43
DOI: https://doi.org/10.57546/livestocktechnology.2022.803-Apr._41

参照: 環境省|自然の恵みの価値を計る|生物多様性と生態系サービス

https://www.biodic.go.jp/biodiversity/activity/policy/valuation/service.html (2024-01-06 参照)

参照: 環境省|自然の恵みの価値を計る|生物多様性と生態系サービス

https://www.biodic.go.jp/biodiversity/activity/policy/valuation/service.html (2024-01-06 参照)