2024年11月21日、和歌山大学システム工学部の講義「事前復興まちづくり学」 (担当: 平田隆行教授) に招かれ、「暮らしの風景を復興する」と題して東日本大震災津波被災地ほかで災害復旧・復興の支援に携わった経験から考えることを学生の皆さんにお話ししてきました。同教授は、このブログのいくつかの記事を読んで連絡をくださったとのことでした。そのなかから、今回の講義では2017年11月に九州産業大学景観研究センターの依頼に応じて行った講演「生活世界の再構築としての復興: 東日本大震災津波被災地一般に求められたこと」の内容を基本に、風景に着目する意義の説明を加えて欲しいとの相談を受けました。そこで、同講演に際して山下三平・九州産業大学教授から伺った所感、助言などを参考に、事前復興まちづくりに関した平田教授の論考「漁村集落の事前復興」への応答を基本としながら、講義内容を作成しました。
私個人としては、生態学に基づく環境デザインを志向するなかで、和歌山大学の教授を務められた養父志乃夫先生の先進的な研究実践に多くを学んできていましたので、同大学の環境デザイン教育・研究には特別な関心を持ってきていました。また、旧吉備町 (現有田川町) で2002年から2004年にかけて都市計画マスタープラン策定に携わった経験を持ち、東日本大震災発生後の2012年には広川町の広村堤防を視察して多くを学び、それを同震災被災地に持ち帰っていましたので、私の経験を同大学、和歌山の地でお話しできる機会をいただけたのは感慨深いことでした。ただ、これは個人的なことに過ぎず、何より東日本大震災津波被災地の経験を和歌山大学が取り組む事前復興まちづくり、そして能登半島地震被災地での支援活動に結ぶことに集中して、講義内容を作成しています。
この記事には、講義に用いたスライド全点を載せました。また、researchmapでは、講義レジュメを公開しています。
1) 平田隆行 2020. 漁村集落の事前復興—和歌山県での試み—. 農村計画学会誌39 (1): 39-42頁 DOI https://doi.org/10.2750/arp.39.39 |
2) 水内佑輔・古谷勝則 2014. 国立公園の成立期における田村剛の示す「風景」概念と用法. ランドスケープ研究 (オンライン論文集) 8: 8-17頁 DOI https://doi.org/10.5632/jilaonline.8.8 |
3) 小野 良 (2008). 三好学による用語「景観」の意味および導入意図. ランドスケープ研究71 (5): 433-438頁 DOI https://doi.org/10.5632/jila.71.433 |
4) エドムント・フッサール (細谷恒夫・木田 元訳) (1974). 『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』 中央公論社 https://www.chuko.co.jp/bunko/1995/06/202339.html |
出典: 国土地理院|地理院地図 http://maps.gsi.go.jp/ (廣瀬改変 2019) |
5) 伊藤裕司ほか (2016). 自伝的記憶と成長との関係を考える. 教育心理学年報58: 263-273頁 DOI https://doi.org/10.20587/pamjaep.60.0_10 |
6) モーリス・アルヴァックス (鈴木智之訳) (2018).『記憶の社会的枠組み』青弓社 https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787234438/ |
7)
廣瀬俊介
(2017). 生活世界の再構築としての復興—東日本大震災津波被災地一般に求められたこと.
九州産業大学景観研究センター
景観セミナー「自然災害と文化的景観」 https://shunsukehirose.blogspot.com/2018/01/on-considerations-to-revitalization.html |
8) 宮城県 (2012). 東日本大震災 1年の記録 (みやぎの住宅社会資本再生・復興の歩み). https://www.pref.miyagi.jp/documents/827/40635.pdf |
9) 仙台管区気象台 (2011).宮城県災害時気象資料 https://x.gd/uSY0v (2024-11-19 参照) |