2017/10/31
おいらせ町 阿光坊古墳群国史跡指定10周年記念講座「史跡と環境デザイン」 A talk on environmental design of Akobo burial mounds historic park, Oirase Town, Aomori Prefecture
古墳時代の終わり頃、7世紀前半から9世紀末にかけて営まれた100を超す古墳が遺る阿光坊古墳群 (青森県おいらせ町) が国史跡に指定されて10年が経ちます。また、史跡は保存管理の検討を経て公園として整備することが計画され、今年10月1日に開園されました。
私は、2008年の史跡保存管理計画策定委員会発足以降、環境デザイン研究者として委員を務めてきました。 そして、同じく委員を務めた考古学や歴史学の研究者らと、10月7日より順に「阿光坊古墳群国史跡指定10周年記念講座」の講師を担当しました。
私の回は「史跡と環境デザイン」と題して、環境デザイン研究者が史跡整備にどうかかわったかを話しました。一番には、この事業に力を注がれてきている地元阿光坊地区の方々、阿光坊古墳群保存会の方々、おいらせ町役場の方々の労をねぎらうとともに祝福の言葉を捧げたく、講演の内容は構成しました。
加えて構成に際しては、地域誌『季刊あおもり草子』233号 (2015年10月発行) の7頁に収録された種市利美阿光坊古墳群保存会会長の言葉「もっと多くの人に知られ」たらとの願いに対して自分なりにできることがしたいとも考えました。この記事を多くの方々にお読みいただけましたら幸いです。
町の方々は「他県ほどではない」と言われますが、しかし東日本大震災津波被災地であるここおいらせ町で震災後の明るい出来事の一つに関係できたことを、私も喜ばしく感じています。
追記 1
講座の終わり、質疑応答の時間に史跡公園で薬草や植物染料を摘むことの是非についてそれを希望する方より確認の質問を受けました。まず薬効を持つ植物は現地に多数自生し (草木染めのもとも皮膚から直接薬効を得るためのものでした) 、管理のために草刈りをする人々の他に、何か利用目的を持って植物を採取する人々がいることはそれも植生管理につなげられるため望ましいと答えてあります。当地の植生は、近世から近代前期にかけて主に薪炭林とされ、以降は拡大造林政策に合わせて木材生産林に転換されていました。こうした二次自然と、人々の新たな関係が結ばれることが期待されます。史跡公園での植物を用いた文化的活動もまた、それに当てはめて見ることができます。
追記 2
質疑応答にあたって、間伐したコナラの幹や枝の使い途としてチップにして撒くことも考えられるがどうかという意見もいただきました。私はチップを好気的発酵なしに用いる場合などの問題点を指摘しましたが、それは一般財団法人日本緑化センターが公開する技術資料「緑地における剪定枝条チップのマルチングの得失について」(堀大才、1998) に基づきます。
文化庁|文化遺産オンライン|阿光坊古墳群http://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/212170
おいらせ町|広報おいらせ2017年9月号 特集「阿光坊古墳群史跡公園が完成」
https://www.town.oirase.aomori.jp/site/kouhou/kouhou-201709.html